福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

ICFファーストでいこう

 1月末から2月上旬にかけて、介護、障害、医療の新報酬が相次いで発表されました。いずれも大幅なマイナス改定は見送られたものの、随所に「重点化」が行われています。注目の介護報酬改訂では、初めて「自立支援介護」や「アウトカム評価」という視点が導入され、たいへん危惧しています。
 改定議論の段階から、デイサービスなどを念頭に、家族の慰労・リフレッシュにまで保険を適用すべきでないとか、自立支援介護なる上から目線な造語を編み出し、介護度改善、科学的介護、ビックデータを活用したエビデンスのある支援計画が必要など、法の目的である自立支援につながらないサービスは抑制すべきだという意見が出されていました。しかし、当の厚労省は、それも一理あるが、自立の概念とは、医療モデルだけでなく、ICFという社会モデルも視野に入れた議論も必要だと集約されていたので、いい着地点が見いだせるだろうと安心していたのです。むしろ機能の維持・改善だけでなく、社会参加の促進を評価する議論へと発展し、報酬化されたらおもしろいなぁとさえ感じていました。
 ところがです。改訂では、バーゼルインデックスという医療モデルの指標を活用し、デイサービスに適用するという方向が示されたのです。入浴や食事、排せつなどの行為がどの程度自力でできるかを測定し、それを維持・改善できた事業所にADL維持等加算を算定するというものです。一般にADLを維持・改善することは悪いことではありませんが、万が一にも、これを国が制度で強制するようなことがあってはなりません。年老いて社会に迷惑をかけまいと、半ば強迫観念にも似た様相で訓練や筋トレに取り組む高齢者も出始めています。加算新設で、機能改善という名のシゴキ・ハラスメントが始まらないか心配です。高齢になると心身機能が落ちていくのは、ごく当たり前の話です。重ねられた齢の尊さや貴さを軽んじるかのような政策より、高齢期のさまざまな本人選択を、ゆとりをもって受容できる社会でなければならないし、それを実現するのが介護保険の目的と役割ではないかと思うのです。
 今回の報酬改訂では、唯一、デイサービス事業にのみバーゼルインデックスが適用されましたが、次回改訂ではこれを他のサービスにも広げるといった情報もあります。脳梗塞後遺症で片麻痺となり、靴下をはくのに30分かかる高齢者が、訓練して25分ではけるようになる努力をサポートするか、それとも、そこはヘルパーさんの力を借りて5分で靴下をはき、残りの25分を趣味活動や社会参加にあてるような生活をサポートするか。意見は多様ですが、法の目的である「尊厳の保持」と「自立支援」の交差には、自己決定と自己実現を支援するという実践原理が流れていることを忘れてはなりません。ICFを念頭に、次回改訂では、脱孤立・社会参加も報酬の対象になるよう日々の実践でエビデンスを積み上げ、医療モデルに走りかけている介護保険制度をリバランスする必要性を強く感じています。