福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

AI vs 介護

 テクノロジーが猛烈に進化しています。車の自動運転によるヒトやモノの移動、無人飛行機ドローンを使った荷物の配送、東大合格をめざすロボット…。最近の極め付けは、世界トップ級の棋士に圧勝した囲碁ソフトの誕生。このソフト、従来とは異次元の人工知能(AI)の持ち主で、深層学習という技術が搭載され、囲碁に必須の「大局観」を身につけたそうです。他にも、差別発言を繰返すAIや自律型AI兵器といった物騒なものまで出現していて、オイオイ、どこまでいくねんっていう感じです。

 そんな中、危惧され始めたのが雇用の問題です。20年後には人間の労働の50%がテクノロジーに置き換わり、大失業時代が来るというのです。従来なら、機械化等で余った労働力は、新産業に移行して経済を成長させる循環が起こりました。しかし、現代社会は成熟・飽和の時代であり、これ以上のモノやサービスを生産する必要性が乏しく、余剰労働力の行き場がないというものです。生産はテクノロジーが担うので、失業というより働かなくていい不労社会が到来する感じです。ただ、日本は労働力人口も減るので打撃は少ないと楽観する識者もいます。世界の社会保障制度は、生活保護→社会保険→雇用創出と予防トレンドで進んでいますが、不労社会により、次の主役はさらに予防的なベーシックインカム(BI)だという議論もあり、そうなれば貧困・格差是正を旨としたBIの位置づけが豹変します。

 置き換わる職業の例は、事務、物流、警備、調理、清掃、建設、通訳などで、驚いたのは、弁護士、医師といったナレッジワークも挙げられています。一瞬、エッ、と思いましたが、囲碁ソフトの例を見れば、ナルホドです。世界中にある法律・制度・判例、医学知識・臨床データ・薬剤情報などの膨大なデータを記憶させ、深層学習するAIが完成すれば、定型的な判断業務は容易に置き換わるでしょう。

 置き換え困難とされる職業の1つが、介護・看護分野です。理由は、これらの仕事が論理よりも共感を重視する特性があるからです。介護・看護は、人間の情緒面に働きかけるクリエイティブでホスピタリティが必要な感情労働だからでしょう。なので、実際の現場が、単におむつを替えるだけ等の定型・無機質状態なら、すぐにでもロボットが代用し、この分野も大失業です。ロボットならヒューマンエラーも起こしません。遅くはありません。もし、現場が定型・無機質なら、病気をみて患者をみない医師と通奏低音で、修正が必要です。分岐は、不足する人員確保ですが、本質は、利用者の「ために」仕事をするのではなく、利用者の「立場で」仕事をする姿勢の確立です。徹底した当事者中心主義であり、サービスの真の競争相手は、進化する利用者ニーズ、多様化する地域ニーズだと捉えるセンスです。テクノロジーの進化は、現下の介護・看護の仕事をより本質に向かわせる好機であり、私たちが掲げるエンパワーメント支援を、より上位へと押し上げる機会として活かしていければいいなぁと思います。