福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

あまりにも日本的な自死の年齢・地域偏在

 前号に続き今回も命のことについて。昨年の自死(自殺)者数が3万人の大台を下回ったとのプチ朗報が3月に公表されました。人口減もあり、下回ったと言っても依然高止まりで、全死因の上位(2011年は7位)を占めていますが、それでも14年連続3万人超の自死者が、2万7858人になったのです。自死予防対策や多重債務対策、NPO等民間の活動などが功を奏したと言われています。ちなみに、今年1~4月の累計自死者数は速報値で9348人、前年同期の9456人をわずかに下回っています。

 自死は、平均して4つくらいの要因が重なって起きるとされ、ご本人の苦悩はもちろん、残された遺族の悲しみや苦しみ、特に自死遺児のケアや支援はまったなしです。突如として大切な人を失った絶望感や「なぜ助けられなかったのか」という罪悪感にも似た遺族の葛藤。そこに自死に対する周囲の無理解や偏見、無言の圧力が襲いかかる。自死者1人には20人程度の近親者・友人がいると言われますが、禁忌性があり表面化しないものの、自死問題は、実は多くの人に身近で、深刻な社会矛盾の極みです。

 さて、ここ数年続いている自死の特徴で気になることがあります。例えば年齢偏在、いわゆる若者の自死問題です。欧米先進7か国の15~34歳の死因の1位はすべて事故であるのに対して、日本では自死がトップ。特に日本の20代では死亡者全体の50%が自死なのです。背景には劣悪、不安定な雇用問題や経済苦があることは明らかで、「就労こそ福祉」と言われる所以がここにもある気がします。

 さらには、地域偏在。自死には地域差があり、人口比の自死比率が高い、いわゆるハイリスク地域があると言います。大阪府内では北東部にいくつかのハイリスク地域がある一方、大阪市内では当法人の本拠である西成区もハイリスク地域と位置付けられています。ハイリスク地マップを見ていると、ここでも仕事や雇用由来の経済苦やメンタルヘルス問題が横たわっているように感じられます。

 そして、もう一つは未遂問題です。自死未遂はここ15年間で約2倍に増加しています。2010年、自損行為による救急車の出動件数は年間7万3570件、搬送件数は5万1833件。精神科に通院する未成年者が15万人いることも気になります。自死は圧倒的に男性が多いのですが、未遂は若い女性に多く、この段階でいかに介入するかも自死対策の重要なポイントだと思います。

 それにしても、なぜ日本はこれほどまでに自死が多いのでしょうか。日本と同様に深刻な社会問題を抱える国は多数ありますが、自死はこんなに多くありません。福祉現場では、障害をもつ我が子の将来を悲観して…や、最近では介護に疲れて…などのケースも増加しており、当法人でも問題意識をもったサービス展開が不可欠です。最後に、いま一番気になることは、話題のアベノミクスです。円の価値が下がり喜んでいる人もいますが、命の価値を下げるような不作為政治は絶対に避けなければなりません。