福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

「いのちがいちばん輝く日」のために

 「団塊世代の死ぬ場所がない」。最近、国が発信しているメッセージの1つです。2011年度、日本の年間死亡者は約125万人で、死亡場所は、病院が98万人(78.5%)、自宅16万人(12.5%)、老人ホーム等7万人(5.5%)、その他4万人(3.5%)となっています。今後も高齢化は進み、2040年の年間死亡者は166万人に増加。一方で、これからも病院のベッドは増えない、老人ホームも微増の状態が続くので、毎年30万人以上もの人々の死ぬ場所が確保できない、というお話。

 私は、森鴎外の高瀬舟を読んで以来、時々、人の死について考えることがあるのですが、福祉の現場でも、平穏死、尊厳死、安楽死、自死などの話題や告知、脳死、延命治療、ホスピス、看取り、胃ろうなどといった会話が増え、最近では「ガンマツ」なる言葉まで聞くことがあります。よく、家族や身内に迷惑をかけずに「ポックリ死にたい」とおっしゃる方に出会います。「ポックリ寺は行列で、コロリ観音が大流行」とまるで落語のような話も聞きます。PPK(ピンピンコロリ)という略称が生まれたり、「ポックリ死ぬためのコツ」という本まで出版され、関連本もよく売れているそうです。

 それもそのはずで、壮年期の突然死・急死(症状発症から24時間以内の死亡)は全体の1割、つまりポックリ死ねる人はわずか10人に1人という「貴重さ」なのです。一方で、平均寿命と健康寿命の差が約7年ということから考えると、多くが人生の終盤に何らかの病気や介護を経験する。私たちは、医療や介護といった比較的死という場面に近いところで仕事をしていますが、一人一人がどんな死生観を持ち、利用者の死生観にどう向きあっていくかが、今後ますます問われてくる時代が来るでしょう。

 最近、滋賀県にあるホスピス病棟の様子を記録した「いのちがいちばん輝く日」というドキュメンタリー映画を観たのですが、病院方針やドクター、スタッフのパフォーマンスが本当に素晴らしく、思わず「ここで死にたい」と思いました。映画では延命治療を受けないと決めた患者・ご家族の最期の様子が描かれているのですが、「どこで死ぬか、いかに死ぬか」を改めて考えさせられました。既述のとおり、これからは病院や施設で最期を迎えられない人が増加します。国は「自宅派」を全体の4分の1以上にしたいようですが、今後、「自宅・延命なし」を選択する団塊世代が増えていくでしょう。そのためには準備が必要です。終末期はご本人・家族が主役ですが、死亡診断をするドクターや看取りに伴走する看護師さんなどの専門家の確保も不可欠です。ご家族以外に、気のあったお友達も自宅での看取りに同席していて、お葬式も安価。身寄りのない人たちは、希望すれば樹木葬という桜の木の下で眠るタイプのエコなお墓が用意されている。「死ぬまで生きる」ために「安心して死ねる」まちを自分たちで創っていく時代が来ているのかもしれません。で、あなたは、どこで、どんな終末を迎えたいですか?