北西部地域包括支援センター
Aさんは80代男性。古い長屋に長年ひとりで暮らしています。介護保険は未申請。
昨年の冬、区役所と家主さんの両方から包括支援センターへ相談がありました。
「話がかみ合わず心配な人がいる。一緒に訪問してほしい。」
「キャッシュカードをなくして銀行でお金をおろせないようです。家賃も滞納しています。」
包括支援センターと区役所、家主さん、西成区社会福祉協議会の見守り相談室と連携し、見守り訪問が始まりました。
Aさんの家には電話がありません。訪問してもAさんは留守でなかなか会えません。
「明日(○月△日)うかがいます」とメモを扉にはさんだり、時間をずらして訪問したり。
何度もチャレンジしてやっとAさんに会うことができました!
Aさんは温和な方で、私たち包括職員にもいろんなことを話してくださいます。
「奈良や岸和田まで電車で出かける。歩いて行くときもある」
「病院へはしょっちゅう行っている。昨日も行ったよ」
でも…。
Aさんが病院へ行ったのは何年も前で、最近は行っていません。
歩く姿もゆっくり少しずつで、遠くまで歩いて行けそうにありません。
認知症があるのかもしれない…。
家の電気やガスも止まっていました。Aさんへ聞くと、
「お金がないので支払いができない」
「友達にキャッシュカードを渡してお金をおろしてもらっていたけど、友達が入院して、お金をおろせなくなった」
友達はどこへ行ったのか…。Aさんはだまされているのでは? 包括職員は慌てました。
急いで銀行へ連絡。Aさんと一緒に銀行へ行き、キャッシュカードの再発行の手続きをしました。
そして、お金を引き出すためにAさんと一緒にATMへ行く日。
ATMまでは遠いので車椅子で行こうとしたのですが、Aさんは頑なに乗ることを拒否。
仕方なく一緒に歩いてATMまで向かいました。やはり途中でAさんは疲れて歩けなくなりました。
途方に暮れた包括職員は近くの介護事業所で車椅子を借りて、Aさんを家まで送り届けました。
ガス代、電気代の支払いと再開のお手伝いもしました。
Aさんは毎日のように商店街へ来ています。
そのうちに包括支援センターへも顔を出してくださるようになりました。
包括職員「ごはんは食べているの?」
Aさん「米はある」
包括職員「お金はまだありますか?」
Aさん「500円ある。これで3日は大丈夫やから、しばらく来ないよ」
でも30分もたたないうちに再びAさん来所。
こんなやりとりをほぼ毎日しています。
包括ではAさんの次の支援目標を病院への受診と介護保険の申請にしました。
包括職員「病院へも行きましょうね」
Aさん「病院はいつも行ってるよ」
包括職員「…。」
それでも我慢強く声かけを続けました。するとある時、「病院?行こか」と返事が!
Aさんの気が変わらないうちにと、その足で一緒に病院へ行き、介護保険の申請もすることができました。
介護保険の認定調査の日が決まりました。約束の日時にAさんが家にいないと調査が受けられません。
包括職員がハラハラしながら朝一番にAさんの家まで行くと、Aさんは家にいてくださり、ホッとしました。
調査員さんが来るまでAさんと話をしながら待ち、無事に調査を受けることができました。
次の目標は認知症初期集中支援チーム(オレンジチーム)と協働で、大きな病院への受診へつなげて専門医の診断を受けること。
Aさんとのかかわりは少しずつ、根気強く。
地域の中でAさんがAさんらしく生活するために。支援はまだまだ続きます。
車椅子をお借りした事業所さんもAさんを気にしてくださっています。
Aさんの意思を尊重しながら、いろいろな機関、地域の方々と一緒にAさんのことを見守り支えていきたいと考えています。