福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

コロナで医療崩壊?

 今月14日、大阪にも新型コロナの緊急事態宣言が出されました。これにより外出自粛が増え、飲食店やカラオケ店などの時短営業が余儀なくされ、経済は縮小していきます。また、失業や倒産、自死件数も増えていくでしょう。幸い、保育所・学校は継続なので子供たちの居場所は確保されそうです。

 医療崩壊を防ぐため。これが宣言発令のひとつの狙いになっています。経済や社会活動を止めてでも医療崩壊を防ぐことに大義はあるのかもしれませんが、そもそもなぜ医療崩壊がおきるのか、正確な説明を聞いたことがありません。日本は人口当たりのベッド数が他の先進国を圧倒。しかもコロナ感染者は欧米に比べるとケタ違いに少ない。CTやMRIなどの高度医療機器の整備も世界トップクラス、看護師の数も標準的な水準のようです。そんな医療先進国でなぜ、崩壊が起こるのでしょうか。

 急性期病院のうち公的病院では7~8割ですが、民間病院では2割しか患者を受入れていないという報道があります。つまり急性期用ベッドのわずか25%に患者が集中しているのです。日本の総ベッド(160万床)を分母にとれば、たった0.7%です。最近も日本医師会が医療崩壊の危機を訴えておられましたが、説得力を上げるためには傘下で患者受入れをしている病院数を調査し公開すべきです。確かに患者を受入れた病院は崩壊の危機ですが、そうでない病院が多数存在するのも事実なのです。民間病院に勤める知り合いからも、業務は通常通りで、むしろ患者さんは減っているという話をよく聞きます。現に、多くの病院では、今この瞬間も、不要不急?の人間ドックが普通に行われています。

 ではなぜ多くの医療機関はコロナ感染者を受入れないのか。度重なる給付金付き協力要請に対してもなぜ静観を決めるのか。経営上の問題、専門性や技術的な問題、風評や差別が不安、リスク忌避、保身、無関心…。理由は色々でしょうが、このままではダメだし、こうした問題を引き起こした政治・行政の責任は免れません。だからこそ国は、緊急事態宣言を出す以上、パッケージとして損失補償するのは当然だし、失業や自死防止対策にはもっと踏み込みが必要です。そして何より、医療崩壊の阻止という本丸にもっと力を入れるべきで、この通常国会で議論される病院への受入れ勧告・公表制度より、感染症の指定をサーズ等の2類相当からインフルエンザ等の5類へ変更することが重要だと思うのです。

 いずれにせよ今回は、これらを棚上げにしたまま市民生活に制限をかけたのですから、よほど謙虚でないとダメだし、ましてや罰則などという法改正はもってのほか。どの口が言っているのかと怒り心頭です。宣言発令は現行の医療政策の敗北であり、政治・行政の不作為責任の象徴なのです。ワクチンの効果など新型コロナはいずれ収束していくのでしょうが、未知のウイルスは必ずまた私たちの社会に現れます。ぜひ最重要課題として危機下でも医療が機能する国づくりに取り組んでほしいと思います。