福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

ウィズ・ディメンティア

 今号は、この秋に当法人で取り組む認知症の人支援キャンペーンの宣伝です。昨年、一昨年は「RUN伴」という全国を縦断する駅伝マラソンの大阪エリアコースに関係団体の方々と一緒に参加して、認知症の人と共に生きる地域社会づくりの啓発イベントを行ってきました。しかし今年は、新型コロナの影響でRUN伴は中止。それに代わる法人独自の啓発イベントとしてこのキャンペーンを企画しました。

 当法人では、今年4月から「認知症の人支援事業」を立ち上げています。これは認知症の人が輝くまちづくりの一環として法人で策定した「ヒューマンオレンジプロジェクト2022」という中期計画に基づくものです。事業にはいくつかのメニューがあるのですが、うち下記の2つをキャンペーンで宣伝し、利用者を募るとともに、2018年に結成された「西成区認知症の人と家族の会(通称:りんごの会)」の加入者も増やそうという企画です。財源は法人で組成したオレンジ基金を活用しています。

 1つは認知症診断サポートです。もの忘れ検診を法人の診療所で受けられるサービスで、75歳以上は無料です。検診で認知症の疑いありと判断されれば、紹介状が書かれ、提携病院で精密検査を受けます。病院での検査費用も助成します。物忘れ等が気になる人はぜひ検診を受けてほしいのですが、できれば、不安になってからの検診ではなく、年に一度行う身体の健康診断と同じように、一定年齢を超せば、定期的にもの忘れ検診に行く生活習慣や地域慣習を作りたいのです。ちなみに現代医学では認知症の発症を防ぐことはできません。なので「予防」ではなく「遅らせる」という視点が大切です。地味ですがこれ、とても大切で、予防の強調は、認知症に対する過度な恐怖心や忌避意識をあおり、時には差別や排除をつくりだすからです。予防という言葉はむしろ禁句にした方がいいとさえ思っています。

 もう一つは損害賠償責任サポートです。記憶や見当識障害、判断力の低下といった認知症の症状によって、他人の物を壊したり人にケガをさせたりする事案は発生します。ある意味、仕方のないことですが、被害者への補償は必要です。しかし現在、これを公的に支える国制度はありません。近隣では神戸市が独自に支援制度を創設しましたが、大阪市はスルーしています。そこで、当法人が民間保険を活用して認知症の人の損害賠償リスクをサポートしようと創設したものです。法人が保険料を納めるので、保険が付保される高齢者に保険料負担はありませんが、りんごの会加入など所定の条件があります。

 認知症の課題は、サミットで取り上げられるなど、すでに国際問題となっています。私たちも認知症グループホームなど各種の事業を進めてきましたが、もっともっとやらなければならないこと、やりたいことは山ほどあります。そのためにもまずはこのキャンペーンを成功させ、「ウイズ・ディメンティア」を合言葉に、認知症の人が輝くまちづくり事業のバージョンアップを図っていきたいと思います。