福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

最期を支えるまちづくり

 

 今号は、今年6月に書いた「葬送の社会化」と地域助葬事業に関連するテーマを選びました。

 ここ最近、人生100年時代という長寿フレーズを散見しますが、多死社会と人口減少は着実に進行しています。最期の迎え方は多様化し、孤立、無縁のケースが懸念されています。特に西成区の人口減少が異様なのです。2015年→2045年の人口減少率は大阪市が10%(大阪府17%)であるのに対して、西成区は48%、なんと市の約5倍です。現在11万の人口が、半減するのです。俯瞰するため転出入による人口変化等を脇に置くと、人口増減は出生者数と死亡者数との差となります。ここから試算すれば、死亡者数は30年間で約6万2千人(現人口の56%)という多死の域を超えたとんでもない事態が予測されているのです。しかも西成の高齢者は7割弱が単身者で、約4割が生活保護世帯と、単身低所得高齢者が多住する地域ということもあり、今後の葬送のあり方が問われてきます。

 私たちが描いている地域助葬事業の主な対象者は、いわゆる行旅死亡人等ではなく、お金がない、家族・親族と疎遠であるなど、ご自身で最期の準備をすることが難しい人たちです。大阪市では、市で火葬した人の一定割合が公営の合葬式墓地(無縁墓)へ納骨されているのですが、この比率をヒントに、先ほどの西成の死亡者数から試算すると、区内で年間600人、区北西部では80人程度が無縁遺骨になる見込みです。こうしたおひとり様以外にも、自分が入るお墓のない人をはじめ、地域の高齢者団体の会員さんや当法人が経営する老人ホームなどでお亡くなりになられる方々ももちろん対象です。

 助葬事業の内容は、葬儀、納骨、遺品や遺産の整理が柱です。葬儀は、友人・知人葬や地域葬を中心に企画。葬儀会場は地域のお寺、隣保館、福祉施設内など既存施設を活用します。納骨は、合祀への抵抗感も踏まえつつ、地域・法人立で無宗教の合葬墓を確保し行う予定です。お墓を所有する時代から共有、シェアする時代へと踏み出そうという考え方です。もちろん一心寺等への納骨もサポートします。遺品の整理は、エステートセールと呼ばれる手法も取り入れ、「遺品は資産」と位置づけてフリマなどで世界中に売却し、利益を葬送費用に充てるなどのアレンジを考えています。遺産は、専門家と連携し整理しますが、できれば生前契約で進めた方がスムーズなので、助葬から終活サポートへと事業の幅を広げていきたいと思います。生前相談・契約では認知症を想定した後見サポート等も行います。

 助葬事業は第1種社会福祉事業でもあるので、行政への届け出が必要です。しかし、大阪では前例がないようで、行政自身も事業要件などを確認しながらの対応になるとのこと。ゆりかごから墓場まで。終わりよければ全てよし。葬送の格差や孤立化を排除し、身寄りのない高齢者をはじめ、すべての人が「安心して逝ける」地域をつくることも西成らしい大切な福祉でまちづくりだと思っています。