福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

広がる、拡げる障害者雇用


 全国で2万6692社(2017年6月時点)。これは法定雇用義務が課せられているにも関わらず、障害者雇用を全くしていない「障害者雇用ゼロ企業」の数です。このうち常用労働者100人未満の企業が約8割、300人未満企業でみると99%となり、ほとんど中小企業です。全国的な障害者雇用者数は14年連続で過去最高を更新していることを考えると、中小企業の苦戦は深刻です。この中には、障害者雇用などまったく関心がない企業から、余裕がない、きっかけがない、ノウハウがないといったところまでさまざまです。ゼロ企業の中に、もし社会福祉法人があれば、何とも情けない話です。

 先月末、国の「障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」から報告書が出されました。所定労働時間20時間未満の障害者雇用を支援する枠組みの創設や精神障害者を念頭に「就労パスポート」を作成するなど多くの新しい方針が示されています。私が関心をもったのは、中小企業における障害者雇用対策で、「障害者と共に働くことが当たり前の社会」を実現するための「重要な鍵」と位置付けられています。巷では「罰金」とも称される納付金制度を継続させつつ、障害者雇用を熱心に取り組んだ中小企業を公的に評価する「認証制度」の新設が提案されています。また今後、大化けする気配を感じるのは、公共調達において企業の障害者雇用を積極評価するという提案です。もしこれが実現すると、大阪で行われている総合評価一般競争入札制度が全国に普遍化していく可能性を見出せるかもしれません。

 障害者雇用が充実するということは、障害者の自立と社会参加が進むということに止まらない大きなシナジー効果があります。障害者雇用の実践で得られる経験や知見は、引きこもりの若者や全国的に広がる生活困窮者の就労支援の発展・強化にも寄与します。高齢者やひとり親世帯、ホームレスや病気を抱える人の就労支援などにもそのノウハウは活かされています。国は1億総活躍社会の実現を掲げてさまざまな取り組みを進めていますが、障害者雇用の促進こそ、すべての人が活躍できる社会実現のセンターピンであることを見逃してはならないと思うのです。そしてもう一つ、障害者と共に働くことが当たり前の社会づくりに向けて大切なことは、障害者差別の禁止や合理的配慮の促進であることはいうまでもありません。先ごろ、その範を示すべき中央省庁が、40数年もの間、雇用率をちょろまかしていたとの報道がありました。もしこれが事実なら不正では済まされない差別そのもの。言語道断です。

 さて、障害者雇用の促進に向けて、世の社会福祉法人は、どんな先例を発信することができるでしょうか。私たちは、すでに事業開始したユニバーサル就労支援のほか、報告書で活性化が示された全国に22団体しか登録がない在宅就業支援団体の認可を持っているので、これを活かして企業とのコラボを進め、障害者をはじめすべての人たちの働きたいを応援する事業企画を練っていきたいと思います。