福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

浮世離れですが・・


 先の通常国会で介護保険法が改訂されました。利用者負担の拡大(3割負担)などが大きくマスコミで報道されていますが、同じくらい重要な改訂は「保険者機能の強化」です。保険者とは、地方自治体のことで、大阪市です。あらゆる保険がそうですが、保険者機能とは、保険事故を予防し、減らすことです。介護保険なら要介護状態が保険事故となるので、これを予防し、減らすこと。介護認定を厳格にする、重度化を防ぐ、給付期間を短くするということになります。しかも今回の改訂では、予防や減少に効果を上げた保険者には国が財政的インセンティブを与えると、ニンジンがぶら下げられました。

 こうした動きが顕在化すると、高齢期、特に75歳以上で要介護状態になることは、果たして事故なのかという疑問にさいなまれます。一般に事故とは、めったに発生しない出来事であって、要介護のような加齢に伴う心身状況の低下は、いわば自然現象で、決して事故とは言えないのではないかと思うのです。年金も、加齢失職による生計費の喪失を補う賦課保険として設計されているわけですが、今の超長寿社会で、これを保険事故と呼ぶにはいささか違和感があります。医療保険も同じ土俵です。

 日本では、国民皆年金が1961年に成立し、1964年に平均余命が70歳となるのですが、この時代に、80歳、90歳の長寿をむかえることは、いわば少数の保険事故だったのかもれません。しかも給付期間は短期なので、これを財政的に支えることは可能という判断だったのでしょう。しかし今の時代は、平均余命がすでに84歳を超え、人生90年時代を迎えています。要介護も生計費の喪失も、事故というにはあまりに数量ありすぎて財政が立ち行かなくなるのは当然です。保険料の値上げもそう簡単ではないので、保険者機能を強化して防ぐ、減らす、遅らせる、の大合唱となるのでしょう。

 人間は老いていきます。働けなくなるし、心身が故障していくのはあたり前。決して数少ない事故ではありません。そう考えると、今更ですが要介護や老後の生活費の問題は、保険でなく税金で支える仕組みが必要なのかもしれません。しかし、そんなお金、どこにあるの?となります。税金のムダ使いをやめ、再分配方法を調整しつつも、不足する時は、増税となるでしょう。経済は成熟し、人口が減少しています。すべての市民が負担する消費税で考えるか、相続税などお金持ちに負担してもらうか。大企業の内部留保に課税するか、ロボット税など新たな税を創設するか。はたまた借金を重ねるか。今回の保険者機能の強化で思い巡らせたのは、注目の2040年問題は、団塊ジュニアの老後を支える税のあり方に行き着くのではないかと感じたことです。最も高齢化が進む日本の福祉政策は世界各国が注目しています。先般のサミットでも認知症問題が取り上げられましたが、いっそ国際福祉戦略を立案し、国連で高齢化支援基金でも作ってくれたら日本は助かるかもしれません。お互い様のグローバル化です。