福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

これぞ格差の最終形!?


 先月9月の敬老の日。恒例の高齢者人口が発表され、65歳以上人口は3461万人で、総人口比27.3%という内容でした(女性は3割超)。日本の平均寿命は世界トップクラスで、2015年度は男性が80.79歳、女性は87.05歳となっています。最近では、平均寿命より健康寿命が注目され、ピンコロ(ピンピンコロリ)願望者の増加や、病院の待ち合所で話がはずみ、行楽シーズンにはツアーが組まれ、全国のポックリ寺やボケ封じ寺に行列ができるなどの現象があらわれているようです。

 昨今、格差社会が進行していますが、平均寿命にも格差があります。今、日本で最も寿命が長い地域は、男性が長野県松川村で82歳、女性は沖縄県北中城村で89歳。そして、最も寿命が短いのは、男性が西成区で72歳、女性も西成区で84歳なのです。トップと比べると男性で10年、女性で5年もの開きがあります。しかも、男女の寿命差が一番大きいのも西成区で、差が小さい地域の約3倍にもなっています。かねてより私は、西成区には「命の格差」や「寿命の差別」が存在していると言ってきました。西成区男性の短命は、たぶん日雇労働市場の影響があるのだろうと推察しているのですが、女性の格差の原因がわかりません。この短命の現実は、単に健康面の問題だけでなく、仕事、所得、住まい、教育、自死等の孤立状況など様々な課題が包含され、累積された結果を示したものでしょう。なので、問題の解決には総合的で中長期的な街づくりの視点や多面的アプローチが不可欠だと考えています。

 さて、社会福祉法が変わり、社会福祉法人による地域公益活動が全国で本格化していきます。公益活動は2つに区分されていて、一つは、法24条の財源の有無や多寡に関わらず、すべての法人に義務付けられた公益”活動”、もう一つは法55条で、公益活動のうち、いわゆる内部留保を原資に行う公益”事業”です。先日、参加したセミナーで、地域公益活動は、決して利益の社会還元ではなく、非課税の免罪符でもない。まさに社会福祉法人のレゾンデートルだということを学び直したのですが、この時に議論になったのは、効果測定のあり方です。すなわち、新たに始まる公益活動が、法人の自己満足ではなく、地域にどういった影響をもたらしたのかをしっかりと自主評価する指標が必要だというもの。いい議論だなぁ、と思ったその時、ハッと思い浮かんだのです。私たちが行う地域公益活動のプロセス指標には、平均寿命の長さを入れようと。たぶん再来年には、5年に1度の最新の市区町村別生命表が公表されると思うので、西成区の平均寿命が何歳になり、上位との差がどうなったのかをモニターしていきたいと思います。一般に、企業の寿命は30年と言われていますが、当法人は設立から20年がたちました。もちろん事業体なので長寿は可能です。地域立を標榜する当法人の健康寿命はどのくらい伸ばせるか。分岐点は、法人ミッション実現への覚悟の強さと大きさに比例するのだと思っています。