福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

おいしいラーメン


 経営に関するこぼれ話にラーメンの話題があります。「おいしいラーメンを出す店に人は並ぶのか、人がたくさん並んでいる店のラーメンがおいしいのか」という問答です。これには深ーい意味がたくさん含まれているのですが、今回は、ラーメンをリーダーが発する方針や指示に例えたお話。リーダー自身としては、正しい方針(おいしいラーメン)を出しているつもりなのに、思うようにメンバーが動いてくれない。「笛吹けど踊らず」で困っている。そんなお悩みを抱えている人達へのヒントです。

 私の周囲にも、おいしいラーメンをつくって出す人が複数いるのですが、いつもお客さんは少なく、いてもリピーター。きっとすばらしくおいしいラーメンなのでしょうが、一方で、値段が一杯ウン千円と高く、接客も無愛想…。そんなこともあっておいしいラーメンは売れません。本人は、世界一おいしいラーメンのつもりですが、売れない。やがて「こんなにおいしいのに、食べない方が間違っている」と逆切れしたり、食べない客を非難したり、しまいには「もう作らない」とすねたり…。これが、個人商店のオーナーならまだしも、組織で責任ある立場の人なら困ります。以前にもその重要性を書いたアカウンタビリティ精神(今の状況は、自分が招いた結果だと捉える主体性)の対極にある稚拙さです。

 当然ですが、世の中は正しいことだけで動いていません。もしそれで動くのなら警察も政治もいらないのと同じで、経営や組織運営においても、正しい方針がいつも良い結果を残すとは限りません。否、むしろ邪魔な時すらあります。現実路線と称する思考停止やサボリは論外ですが、現実の社会や組織、歴史は、左脳的正解よりむしろ右脳的最適解を求めています。正解の何が悪い、と叱られそうですが、いくら正解でも結果の出せない方針は、この世に存在しないのと同じ。時間も経費もムダなのです。

 ではどうすれば、最適解を出せるのか。ずいぶん前に私も先輩から叩き込まれ、今も修行中なのですが、人は理屈ではなく、共感で動くという本質を理解することに尽きます。共感を得るためには、WHATより、センスの良いHOWを発信し、メンバーの腹落ち感とワクワク感をかきたてるのです。もちろん、上から目線な態度はダメで、ものの言い方やタイミング、相互の信頼関係も大切です。組織ミッションへの共感や内発的動機づけの向上、傾聴ベースの対話も鍵です。こうした行動は、サーバント型リーダーシップと呼ばれ、私も以前から実践目標にしています。大量生産・消費から多品種・少量へ、成長から成熟経済へと変化する時代に適したモデルで、従来の君臨・自己中心型のリーダーシップは、もはや時代遅れなのです。ましてや福祉・介護のような「人がすべて」の世界では、リーダーでなくても必須のスキルです。とまぁ、言わばこれも「正解」を書いているのかもしれませんが、新年の幕が開け、法人設立21年目に突入した本年、私も、行列のできる福祉法人づくりにベストを尽くす所存です。