福祉でまちづくりを進める
社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会

死ぬまで生きる


 高齢化の進展もあって、最近、書店などでもよく見かけるようになった「エンディングノート」。「もしもノート」と呼ばれることもあり、遺産相続、病気の告知、延命治療、葬儀の希望など、いざという時の大切なことを書き込むノートです。終末期、まずはご本人の意見を尊重し、大切にすることが私たちの基本。けれど「その時」は、重篤な病状等によりご自身の意思が十分に表明できないケースが多いのです。最近は、子どものいない単身高齢者が増えていることや無縁社会の広がりともあいまって、ノートの存在は不可欠なものになりつつあります。以前からリビング・ウイルとも言われてきました。

 一方、これからの日本は認知症高齢者1000万人時代を迎えます。当法人でもグループホームなど認知症高齢者の支援に取り組んでいますが、さまざまなサービスを提供する時に必要なきめ細かな本人情報がわからないケースが少なくありません。日々のプログラムづくりには、個々のプロフィールを踏まえたオリジナリティが大切なので、サービスの利用に際しては、ご本人にいろいろとお伺いするのですが、どうしても失念していたり断片的であったりすることがあります。ご家族に照会しても意外とご本人の若い頃のことなどはご存じでないケースもあって、ケアの個別化へは手探りが続くのです。

 そこで、当法人では、エンディングに関することと自分のプロフィール等を合わせて書き込めるノートをつくろうと発案。検討を重ね、今般、ようやく完成しました。その名も「ホープ・ノート」。まだまだ荒削りですが、「50歳になったら書きはじめたいノート」とサブタイトルも付けました。ホープは希望。認知機能が低下しても自分にあったケアが受けられる。そして、最期まで自分らしさを失わないためにも、ホープ・ノートを書こうと呼びかけています。ややネガティブなエンディング関連項目に加え、プロフィール項目は、ふるさとのこと、卒業してきた学校や若い頃の思い出、結婚の様子や子どものこと、仕事のこと、好きな食べ物、苦手な食べ物、好きな本や音楽、好きな映画やテレビ、好きな
場所や行ってみたい旅行先、趣味や特技、大切にしている物など、個別ケアのための基本情報です。

 今後、ノートづくりを広く呼びかけますが、1人でこっそり書きたい方も大歓迎です。書いたノートの保管場所がわからなくなることもあるので、預かりサービスも実施予定です。ノートを書くことは、自分の過去を振り返りつつ、やがて訪れる病気や障害、そして最期に真摯に向き合う作業です。改めて自分を見つめ直すプロセスであり、死生観、自己肯定感や自尊感情とも深く関わります。書いては消し、書いては消しを繰り返すこともしばしばです。当法人ではミッションにエンパワーメント支援を掲げていますが、ノートを書く営みは、まさにエンパワーメントそのものです。自分に合ったケアをうけながら、死ぬまで自分らくし生きる。ホープ・ノートをご希望の方は、ぜひご連絡ください。